最近の私の困ったちゃん。
吉木雄貴選手(写真)だ!
現在、連対率 24% 3連対率 31% と若手としては不本意な成績である。
先日の和歌山の開催でも、私の客観的アドバイスをよく聞き入れ、積極果敢な競走をするも残り30mで見事に失速し(これを『タレる』と言う)6着に沈んだ。
まずいな・・・
私は思った!筋力自体は上がっているし、練習もマジメにやっている。レースにしたって積極的にやっている。 こういう状態で結果が出ない時期が続くと腐ってしまうのは誰でも共通だ。
あくる日のレースでも不本意なレースとなった吉木選手から、即連絡が来た!
『明日、大学に行っていいですか?すぐ見てもらいんで』と言う。
電話からも必死さが伝わってくる。
「なんとかしたい!」
私はこういう真剣に迷っている選手と時間を共にする時に最大のやりがいを感じる!
『俺!生きてるな!』って実感が持てる!
やったことは、大学駐車場でのハイスピードカメラによるぺダリングの確認。
つまり写真を例に取って言うと、右足はここから力を入れて踏み込んでいく位置ですが、この時に左足にまだ力が残っていると右足の力と相殺してしまいロスとなる。
つまり、右足にとって左足が負荷になる。
だから、この地点では左足にかかる力はゼロになっていなければいけない。ハイレベルな選手はこの切り替えが素晴らしい。
吉木選手の異常なまでに最後の直線で失速する理由は、結果が出ない自分を責め続けペダルに力を込めるあまり、
いつまでもペダルをしっかり踏んでいるものだから次の足の負荷になっていた。
だから、「重てえな~」と思っていた重さは実は自分の力だったんです。
そりゃ、鍛えれば鍛えるほどに重くなる。
しかし、こんな理屈、『プロなんだから知ってんだろ~に!素人に指摘されてどうすんの?』などと思いますよね?
実はこの理屈は当然、競輪学校で教わっています。
強い選手はこうなっていますよ!という計測データは知ってます。
ただ、それをやっている人はどんな感覚か?ということは教わってないんです。
というより、教われないと言った方が正解かもしれません。
『技術』→伝えられるもの
『技能』→伝えられないもの
つまり、吉木選手は「下死点まで踏んだらすぐ切り替える」という技術を理解しそれをやろうとしたら長く『踏みすぎ』になっちゃってるんです。
だから『時計で言えば、今は6時まで踏むつもりでやってたら8時くらいまで踏んでしまいロスになってるから、極端に4時くらいまでを強く踏む意識でやってみよう』てなこと言いながら、映像を撮ってはお互い確認し、感覚とのすり合わせを行う。「次は3時くらいでどうだ?」などと言いながら試行錯誤をした。
徐々にであるが吉木選手も感触を掴んだようで「これでやってみます!」と表情も明るくなった!
「思う事言って下さい!」と選手が言い!
「俺の見る目ではこうだけどどう?」と思った事をぶつける!
こんなやり取りは快感だ!
「こんな事言ったらイジケルかな・・・」なんて気遣いは無くて済む爽やかなやり取りだ。
最高に幸せな時間。
これぞ私の遊びです!
あとは吉木選手の爆発を祈る。