大学時代だったか、指導者と選手の関係について聞いた話
選手のレベルが低い場合(つまり初心者)の指導では、指導者が見本を見せれることが重要になる。
それは、選手の意識のレベルが低い場合にもあてはまることも多々ある。
「そんなこと言うけどお前(指導者)はできんのかよ」
なんて文句が出るようならレベルが低い証拠なので、そんな時には指導者が自ら実力を見せつける必要が出てくる。
見本を見せられることが重要なのはこういうときである。
「自分でやれないことを選手に言っても従うわけがない」という心理ももっともな話のように感じる。
しかし、「指導者が自分でやれることしか言ってはいけない」ということであれば、自分の能力を超える選手を指導することや、まだ見ぬ新技などはやれるわけがない。
陸上の日本人初の記録を狙っているS選手の指導は日本人ではできないということになってしまう。
レベルが上がってくると、選手が指導者に求めることが見本よりも理論となってくる。
まだやったことのないことに挑戦している指導者と選手の関係は上下関係というよりは、
同じミッションに立ち向かっていくチームメイトのような関係といったらいいのだろうか・・・
つまり、お互いを尊重して
「俺はこう思うけどどうかな?」
「なるほど、ちょっとやってみます。やってみたら、こんな感じがします」
「なるほど、ほんじゃもうちょっとこうかな・・」
「それだとちょっとこんな不都合があります」
「なるほど、それじゃこれでどうだ?」
・・・ってな調子でディスカッションをしながら追求していくことになる。
小林選手はこれができる選手・・・というか、こういう風に自分の技術を開発してきた選手である。
こんな選手とのやりとりは指導者として本当に楽しい。
小林選手の姿勢の素晴らしいのは「やってみてくれる」ところである。
今回は、小林選手が今シーズンの成績(少々不振で25%ダウン)を絶対に取り返すと奮起しての「倍返し計画」であった。
ピッチングフォームを根本からひっくり返すネタをくれ!
という楽しいリクエストの中で私が今季のネタとして編み出した
「足の力使わなくたって投げられるんじゃないか?投法」を伝授した(笑)
「足をしっかりついて、足の力を使わなければ投げられないだろう!」
などと言われたらそれっぽく聞こえて「ハイ!そりゃそうです!」などと返事していまいそうだが、
「それホントか?」
などとちょいと考えれば、
ハンドボールやらバレーボール、さらには水球なんて足がついてないのに相当な球を投げてるじゃんよ・・・っていう捻くれた発想からです。
足なんか地面についてなければないで、どっか使ってなんとかするのが人間の動きの凄いところです。
実際に投げてみた小林選手から「この感触が欲しかったんです」と言ってもらうことができた。
長年の「なんで同じ形なのにこんなに違う球速なのよ」という疑問もハッキリわかった。
やってる奴はやってるし、やってない人はやってない。
この理論を試した中学生は球が速くなり、高校生はキャッチャーのスローイングが格段のよくなり(その前がどうにも力が入らなかった)
ドラフト指名された社会人は球が速くなったと喜んで試合に臨んだら2回でKOされるというオマケもついたがナカナカいい感じ。
ちなみにイップスの卒業生を捕まえて試したら見事に改善方向になった。
実はこの理論を電話で小林選手に伝えたところ、言葉で伝わらず、結論として
「聞いててもよく分からないんでいきますわ」ということで名古屋から3時間ドライブしてやってきた(笑)
この行動力が彼の強さである。
例によってまたS高校監督のO山先生の球が速くなった(笑)
この学校は指導者が力を見せつけることが大切なレベルなのでこれはこれで重要なことである(笑)