小雪がちらつく寒さの中で和歌山S高校の指導をした。
車の温度計は2度くらいであった。 野球をやるにはかなり寒い。
この時期の練習は「冬季トレーニング」と称して動き回るトレーニングを多くすることになる。
真夏の炎天下ではできないような運動量をこなすことができるのもメリットである。
とはいえ、単調なダッシュを繰り返したり長距離を走るというのはやっている方も辛いが見ている方も少々つらい。
体力向上を目的にしつつも、愉しくというときによくやるのが、野球部でありながら「サッカーをする」というパターンである。
野球部はなぜかサッカーが好きである。
このことに関してはそれなりに考察があるのでまたの機会にじっくり述べることにする。
冬季トレーニングの時期に野球をする(ボールを握る)か否か?というのは長年議論されているテーマである。
どっちもそれなりに筋の通った理屈がある。
こういう議論を暖房の効いた温かい部屋ですると大抵「野球やるべし」という結論になる(笑)
ところがギッチョン、実際に気温2~3度のグラウンドに出てみて、さぁ素手を出してじっくり野球技術を・・・となった途端に温かい部屋で考えた構想はゆらぐ・・・
「こんな中で野球なんかできるか!」と・・・
やっている選手の方だって戦意喪失である。
そんなわけで、クソ寒い中でもできる、野球のメニューの定番としてあるのが長い距離を走りながら途中で打球を捕球する「アメリカンノック」に代表されるような「ノック」つまり守備の練習である。
バッティング練習は、打つ方も守る方も運動量が減る。
個別にやるには各自のティー打撃という手もあるが、これだと皆で集まってやる意味がない。
練習の質の個人差も激しい。
というような諸事情で、守備に絡めた練習がありがちなのに対して、O山監督から
「守備練習は飽きたから打撃練習を絡めたメニューをお願いします」というリクエストを受けた。
う~ん、これはこれで少々難題であった。
皆が寒くないように運動量を確保しつつ、かつバッティング練習になり、野球がうまくなる。
さらにこの時期のメインテーマである体力向上・・・
そこで考えたのが、ティー打撃によるシートバッティングであった。
コーチのトスしたボールを力いっぱいに振りぬく、ランナーとして走る。
そしてそれを守る。
次から次へと打者が打ちどんどんランナーが走りまわっている。
自分が長打を打てばそれだけ2塁打、3塁打、もっと抜けたらホームラン!
面白いもんで、ベースランニングと称して「はいホームランで一周」なんて言ったら「エ~」と不満が出るが、写真のように自分が打って右中間なんて割った日には喜び勇んで走るものである(笑)
自分が打った打球を守備陣が追いかけている間に自分がどこまで逃げれるか?(走れるか?)これが野球の興奮である。
皆が一つのボールを巡って夢中になる興奮がある。
ホームランを打ってヘロヘロになっている打者でも、すぐに回ってくる打順で
「長打を打つから走る距離が長くなる」のに、やっぱり長打を打とうとするところがホントに可笑しい。
自分の打った球を追いかける分には嫌じゃないというのはゴルフと一緒である。
守っている方も次から次へと打球が来るので、ダラダラしている暇がない。
凍えるような寒さの中で皆が湯気を立てて「野球」をやっていた。
この練習をクソ寒い中で4時間以上やったものの全く飽きることなくやることができた。
エラーなども多く出るが、このメニューの主旨は走り込みにあるので、エラーもランナーへのランダム刺激となり非常にいい感じであった。
選手がサッカーをやっているときのようにイキイキしている(笑)
「つまらない練習もジッと耐えるのが修行」というのそれはそれでいいけども、楽しませるためのネタがサッカーというのでは少々さみしい。
野球で「あれやりたい」と思わせるネタができた。
これはバァさんたちにやっているソフトボール指導の経験が大きい。
いい歳して、こんな練習方法を編み出したくらいでニヤニヤしていていいのだろうか・・・
という気もしなくはないが、非常にいい気持ちであった。